失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
陽は基本的にめんどくさがりだ。一発で決めるのを好む。
正面からいって避けられるのが嫌で陽がやり始めたんだ。
「そのフェイントを教えたの俺だし」
そう。
フェイントをやるように勧めたのも大翔だし、これを教えたのも大翔だ。
「ふざけてんのか?お前、俺のことなめてんだろ」
イライラする。
こんなに自分は真剣なのに、陽は楽しむように喧嘩している事に無性にイライラする。
「――――来いよ」
「言われなくても」
大翔は自分から足を踏みだした。
体は嫌だと叫んでいる。
陽と喧嘩したくない。
そう叫ぶ。
だから目に涙がたまる。
――今はダメだ、泣くな
涙で先が見えなくなるとか有り得ないだろう。
大翔は陽の正面から殴りかかる――――振りをして、一旦しゃがみ、下から殴りかかる。
同じ。
陽と同じ。
そんなこと分かってる。
でも今は……
もちろん陽は軽く避けた。
小さく笑ったような気がした。
「大翔、速くなったな。スピード」
「まぁ、俺だってただボーッとしてた訳じゃない」
ずっと陽を追い掛けてた。