失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



突然聞こえた声に、俺は反応しなかった。


声は聞こえたが、こんな雨の日に地面に寝転がっている見た目不良に声をかける奴はいないと思ったから。


つまり、俺は、そいつが俺に話し掛けているということに気が付かなかった。


『おい!お前だってば!』


そいつは足音も立てず、俺の横に寄ってきた。


『っんだよ』


『イライラしてんな』


『っ、』


図星だった。


俺はイライラしてた。だからこそ、そいつの言ったことが気に障った。


『テメェ、何の用だ』


俺はそいつの顔を見て睨んでやろうと思った――――けどできなかった。


そいつが思いの外きれいな顔をしていたから。


あの時は確か金に近い茶髪だったな。


そしてその見た目超イケ面は、俺に爆弾発言をかます。


『俺のシュークリーム知らねぇか?』





知ってるわけねぇだろ。


『……』


黙ってしまった俺に、そいつは何を勘違いしたのか、笑顔になった。


『まぁ怒らないから言ってみろって』


『いや、知らねぇよ』


何で俺が知ってる前提なんだよ。




しかもそいつめっちゃ落ち込みやがった。


< 361 / 509 >

この作品をシェア

pagetop