失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



ガンッ!


堅い拳が顔に当たる音がした。


『ちょっ!おい!』


俺は慌ててシュークリーム男に駆け寄った。


『お前さっきの自信はどこ行ったんだよ』


シュークリーム男はいとも簡単に殴られてしまった。


でも、倒れない。


乱れた髪が妙に色っぽい。


『お前……』


顔に怪我をしていた。


口の端が少し切れて血が出てる。


それに触ろうとした時――


『触んな。てめぇは引っ込んでろ』


さっきシュークリームを探していたときとは全然違う顔。


血が出てるからとかじゃなくて、真剣な顔。


『おい、』


そいつは俺じゃない自分を殴った奴に話し掛ける。


そいつはおもいっきり殴った相手が倒れもしないことに少し……いや、かなり驚いている。


『これで気ぃすんだか?』


冷たい、声。


さっき俺に話し掛けた人物と、今俺の目の前にいる人物は同一人物か。


それを疑いたくなるくらいに違う。


俺に話し掛けた時の暖かさはもう、ない。


『気ぃすんだなら、もうこいつに関わるな』


何で。何で、お前は俺の為にそんなことをしてくれるんだよ。初対面だろ。

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