失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
なぜか泣きたくなった。
『もし気ぃすまねぇならもう一発どうぞ』
両手を広げて、抵抗しませんってのを全身でしめす。
そいつはその無防備さにつけいることもせず、ただ気味の悪いものを見たような顔でその場を去っていった。
そいつが見えなくなるまで俺たちは一言も口を利かなかった。
でもそいつが見えなくなった後、俺は急いでシュークリーム男に駆け寄った。
『っおい!』
『ん?』
さっきの冷たい、恐ろしい声が嘘みたいにまた気の抜けた声に戻った。
ここだけみればすごく頼りないのに――。
さっきのは、一体?
『お前、血出てるぞ』
俺がそう言うと、シュークリーム男は無表情のまま傷口を触り、
『あー、そのうち治るだろ』
めんどくさそうに言った。
『そんなことよりコンビニ行こうぜ。シュークリーム食べたい』
またシュークリームか。
こいつ、すごいシュークリーム好きなんだな。
俺がこいつのことで分かったのは、何かすごい!ってのと、シュークリーム大好き、くらいだった。
『シュークリーム奢る』
そう言えば彼は嬉しそうに笑った。