失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
まるで昔テレビで見たヒーローみたいだ。
シュークリームを探してコンビニに向かう途中のそいつの背中を見て思った。
『お前、何で俺の代わりに?』
なんで怪我してまで俺を庇ってくれたんだよ。
『まぁ、気まぐれ』
なんともかっこいいセリフが返ってきた。
ただし、それはヒーローが言えばの話だ。
こいつが言えば本当にそんな気がする。
『あえて言うなら――』
『え?』
いったん言葉を切ったそいつは何かを考えてから言った。
『お前とトモダチになれそうだったからかな?』
『は?』
『なんか、うん、友達になれる気がした』
俺、今友達100人目指してんだよ。
なんとも庶民的なヒーローが俺の前にあらわれた。
『なぁ、』
『あ?』
まだお互いに名前も知らない。
『今度喧嘩するときは意味あるもんにしようぜ』
見た目不良が何を言うか。
『誰かを守るため、とかさ』
そう言ってそいつは照れた。
え?何で照れた?
『シュークリーム、やっぱ俺が奢る』
『は?』
シュークリームぐらい奢らせろ。それ位でしかできないし。