失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
とりあえず大雅に帰ることをメールで伝えた。
返信は、俺たちに片付けを任せていくな!というものだったが無視。
足早に家に帰り、風呂に入り、髪をスプレーで黒く染め、服装をそれらしいものにした。
「よしっ、あとは…」
問題なのは、亜美に会えるかどうか。
アポもなしに、深瀬に行き、誰かが会ってくれるとは思えない。
「でも、やるっきゃないよなぁ……」
後先考えず行動するのは今回で最後だな。
「まぁ、行ってみるか」
せめて会うだけでも。
顔を見て、亜美が元気だと分かれば少し状況は変わるかもしれない。
大きな門。
その横にかかる立派な表札には、深瀬と書いてある。
「うわぁ、格が違うねー」
住む世界が違うとか、こういうのをいうんだな。そう思わせる亜美の家。
さすが日本有数の大企業。
大翔の家も世間からは“豪邸”と言われているが、ここと比べられたら、うちなんかかわいいものだ。
「さすがに手震えるわ」
ミスは許されない。ミスしたらうちは大変なことになるだろうなぁ。
「兄貴、すまんね」
大翔は一歩踏み出した。