失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
もし、ミスすればうちは深瀬に迷惑を掛けた馬鹿息子のいる家というレッテルを貼られる。
めずらしく臆している自分に気が付いた。
「……」
よくこんな豪邸に住んでるお嬢様をあんなとこに連れていこうと思ったな、自分。
思い出すのは初めて会った時のこと。
ぶつかった相手が誰でも、態度はアレだったに違いない。
でもさすがに顔を上げたときにあの深瀬だったときは驚いた。
しかも失恋してるみたいだったし。
昔の兄貴みたいに、利益を考えたわけじゃない。
深瀬と仲良くなっておけば、そんなこと、突然亜美を前にすれば考えてる余裕なんてない。
ピンポーン
やっと押したインターホン。
まだ少し手が震えてる。
「はい、深瀬でございます。どちら様でしょうか?」
丁寧な言葉遣いと柔らかい物腰。
一流の家には自然と一流の人が集まってくるのだろうか。
「忙しい時に申し訳ありません。斎藤大翔と申します」
「失礼ですが、ご予定はございますか?」
「いえ……。近くまで来たので亜美さんに久しぶりにご挨拶でも、と思いまして」
セールスマンの気分だ。