失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
「少々お待ちください」
俺は知らないうちに顔に張りつけていた営業スマイルをとった。
もっと余裕を持たないといけないのに、ここにくると使用人と話すのでさえ緊張する。
「……お待たせしました。迎えの者が参りますので、どうぞ中にお入りください」
「ありがとうございます」
使用人の言葉が終わるのと同時に門がゆっくりと開いた。
大翔は一度大きく深呼吸をした。
ここは息が詰まる。緊張で。
「お待たせいたしました。ではこちらへ」
優しいほほ笑みを絶やさないその人は大翔の数歩前を歩きながら庭を少し説明してくれた。
「失礼ですが、斎藤様は亜美様のお友達でらっしゃいますか?」
「はい」
亜美がどう思っていようと俺たちは思っているのだから、友達だな。
「そうですか……。それはよかったです」
今までもにこやかだったが、亜美の話の時になるとこの人の微笑みは優しさに、温かさもプラスされる。
「この屋敷も淋しくなってしまいます……」
「え?」
大翔の疑問は聞こえなかったのか、彼はどんどん歩いていく。
そして案内された部屋でしばらく待機。