失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
「食べたくなったら取り寄せるよ」
「やりかねん」
「そのときは、武の家の野菜も入れといて」
「めんどくさっ」
「そんなこといわないで」
不服そうな顔をしながらも、きっと“そのとき”が来たら武は入れてくれる。
彼はそんな人だ。
「いつまで行くの?」
「一応大学卒業するくらいまでかな」
「ふーん」
あんまり興味なさそう。
なんか、よく考えたらあたしの周りにはこんな人が多い。
自分で聞いておきながら、“ふーん”で返す奴。
大雅とか、大翔とか
―――――陽とか
「今、誰のこと考えた?」
「え?」
「今、頭に浮かんだ奴の名前言ってみ?」
睨むようなその視線に、誤魔化しは効かないとわかる。
「………よ、陽」
もっと浮かんだはずなのに、言葉となって出てきたのは、陽だけだった。
「……大事じゃないのか?そいつが。別れが辛いくらい……」
「それは……」
別れが近づいてくるにつれて感じていた。
遅すぎるこの感情に。
武はきっと気が付いてる。