失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
ご飯をお腹いっぱい食べて、たくさん話をして、武の家で作られた野菜を少しお土産にもらい、亜美は帰宅することにした。
「玄関まで送ってくよ」
「ありがとう」
武の部屋を一歩出たらそこは公共の場。
砕けた会話はしない。
「……お前、泣かない自信あんの?」
突然聞こえた真剣な声。
思わず足が止まった。
しかしそれは一瞬で、亜美はまた一歩踏み出す。
「自信は……ない。でも笑顔でバイバイしたい。あいつらの持つあたしの最後は笑顔の記憶がいい」
「……そっか」
「うん」
あいつらからあたしの記憶なんか無くなるのが一番だけど、万が一、あたしを覚えてくれているというなら、それはあたしの笑顔の記憶がいい。
終わりよければすべてよし。
あいつらと過ごしてきた期間は短い様で長い。
最後が綺麗な記憶なら、全部いい記憶で終わってくれるはず。
「ここでいいよ。ありがとう」
「あぁ、“またな”」
「うん。“またね”」
再会を約束して、あたしは武の家を後にした。
―――――――――笑顔の記憶