失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
報告
家に帰った亜美は休む暇もなく、お風呂に入り、もう一度メイクをした。
これから最後のパーティーに行かなければならないのだ。
父親が主催し、仕事でいつもお世話になっている人の一部を招いてのパーティーだ。
派手でないドレスに身を包み、佐伯さんに髪を巻いてもらいながらガッツリメイクをしていく。
「……少し濃すぎやしませんか?」
「……いいんじゃない?最後だし」
そう言うと、佐伯さんは腑に落ちない顔をしながらも、丁寧に髪を巻いてくれた。
「これも最後かな?」
佐伯さんはアメリカにはこない。
もともと佐伯さんは父の秘書だ。
しかも超のつくほど“有能”な。
あたしには勿体ない。
「これも最後だ」
あたしは準備が終わった自分の顔を鏡で見た。
これも最後。
「できる、あたしならできる。あたしは深瀬だ。できる」
こうやって鏡を見ながら自分に“深瀬”を言い聞かせるのは最後。
毎回少し違うけど言い聞かせてきた言葉。
それが必要なくなるくらいに成長したい。
「――行こう」
亜美は堂々と背筋を伸ばし、廊下を歩いた。