失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
本音
気が付いたらもう日は傾いていた。
「長い間話し込んじゃったなぁ……」
亜美は駅の時計を見て、時間を確認した。
電車はすぐにつく。
佐伯さんに迎えに来てもらおうかとも思ったが、アメリカに佐伯さんはいないということを思い出し、呼ぶのはやめた。
「ただいまぁ」
「お帰りなさいませ」
玄関をあければ佐伯さんがいた。
「あれ?お父さん帰ってきてるの?」
佐伯さんがこんなに早い時間にいることはすごく珍しい。
大抵父親と一緒だし。
「はい、隆さんが今日は亜美さんと長く過ごしたい、と申し上げまして……」
「別に良かったのに……」
一生の別れじゃないんだから。
「今日は特別です。使用人一同も食事の席にご一緒させていただきます」
「おぉ!いいね!」
うちにいるのはお世話係の人が四人、庭師が二人、シェフが二人だ。
それに佐伯さん。
気を使わなくてもいいのに、彼らと一緒に食事をとったことはない。
最後に、それが出来るのなら、とても喜ばしいことではないか。