失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
優しい嘘
亜美が去った後の音楽室は一瞬とても静かになった。
だが勿論それはたった一瞬の事。
「なぁ、陽」
颯太がドアを見るのもいやだというように顔をしかめながら陽に声をかけた。
「ん?」
「何でアイツなんだよ」
怒鳴ってるわけじゃなくて、静かに問う。
「大翔が連れてきたから」
理由はそれだけだ。
颯太が信じられないといった顔をした。
「お前も知ってるだろ?こいつの人を見る目は確かだよ」
亜美が出ていったドアを見つめる。
そこにはもう誰もいないのに。
「まぁ俺はアイツの正体知ってっから」
まだ大翔しか亜美の正体を知らない。