失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
めんどくさかりの陽が、広いって理由だけでうちを選ぶわけない。
「あと……」
「あと?」
陽の次に出てくる言葉を待ってみる。
でもなぜか言いたくなさそうな顔をする。
どんな理由なのか気になるだけだ。
「来てみたかった」
くだらねぇ。
「何でいまさら?」
5年前だってうちに来るチャンスはいくらでもあったはずだ。
「大翔が……」
大翔?
そういわれて初めて気が付いた。
5人の中であたしの家に来たことがあるのは、大翔だけで、しかも正装して、だったということに。
「要するに、大翔は行ったことあるのに、俺は行ったことないから羨ましいとかそんな感じ?」
「まぁ、ちょっと違うけど、そんな感じ」
どっちだよ。
よく分からない陽の返事。
「嫉妬だね」
大雅がおもしろそうに言った。
「は?嫉妬?」
どこに?
「彼女の家に自分が一番に行けなかったことが悔しくて仕方ないんだろ?っは、青春してんねー」
「うっせ」
小さな抵抗を見せた陽だが、少し赤い頬が大雅の言葉が正しいことを示していた。