失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
嵐が去った後というのは静かなもの。
それはこの二人にも当てはまるもので、見事な気まずさが空間を支配している。
「とりあえずこれ食え」
そう言って陽が出してきたのは、陽が働いているお店の名前が書かれた箱。
「……俺が作った」
箱のなかにはキラキラ輝くシュークリームと、それに囲まれたひとつのケーキ。
ちょ、ケーキ、かわいそう。
「すごい、陽はこんなの作れるようになったんだね」
「うまいもん食べたくて」
要するに、自分のためってやつですね。
「食べて、いいの?」
食べるのがもったいないくらい。
「食べるために作ったんだろ?」
「そうだね」
あたしは箱の中から、ひとつシュークリームを取り出した。
そして一口かじった。
「どうだ?うまいだろ?」
「う、ん……っ」
「泣くほどうまかったか?」
食べた瞬間に広がった味に、あたしは自然に涙を流していた。
「うまくてたり前だ。大事な奴を想って作ってんだから」
まっすぐな視線の先にいるのは、あたし。