失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
陽は立ち上がり、あたしの前に歩いてきた。
そしてあたしの頭のうえに手をポンと置いて、あたしの頭を揺らす。
「お前が帰ってきたとき、これ食って笑えるように、お前がこれ食って幸せになれるように。そう思って作ってる」
「っう、ん……」
嗚咽でうまく返事ができない。
そんなあたしを陽は苦笑いで見つめた。
「お前の家を選んだのは、嫉妬もあるけど、亜美が何も言わなかったら認められたってことだから」
「え?」
意味の分からない言葉に亜美は首を傾げた。
「ちゃんとお前の横歩いても深瀬に傷が付かないくらいにはまともに見えるだろ?」
そう言って、今までに見たことないくらいの笑顔をあたしに向けた。
高校生の時、あのままの陽なら確かにあたしはうちに入るのを断っていた。絶対に。
それくらい見た目が悪そうだった。
今は、断る理由はない。
「俺、かなり必死だから。お前の横を歩いても恥ずかしくないようになるために」
もう言葉は出てこない。
一生懸命あたしは首をコクコクと振って頷いてみせる。