失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



しばらく歩いた頃、大雅の腕を離した。



「おい」


大雅の呼び掛けを無視してあたしはどんどん進む。



「おい、あほ女」


無視。



「おい、亜美」




初めて名前を呼ばれた。




「……お前、あんなこと言われて悔しくないのかよ」



さっきみたいに探るような声じゃなくて、


でも低い声。



――怒ってる




「気にしてないよ」


「嘘だな」


「嘘じゃないよ」


「嘘だ」


「嘘じゃないって言ってんじゃん」


「ムキになるから嘘決定」


ついつい言葉につまる。



返す言葉もない。




「俺はあと三秒あこにいたらあいつをぶっ飛ばしてたけど」




遊びにいくんだけどさー、みたいな軽い感じで言われた。



「お前は俺らに媚売ってんのか?ちげぇだろ?」



あぁ、やばい。



涙が溢れそうだ。




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