秘密の関係
「気をつけろよ?」
あくびまじりの声で、彼が言う。あたしは、窓を静かにあけて軽くのびをした。
彼の部屋のこの窓から、あたしの部屋の窓まで、距離はだいたい20センチくらい。
「だーいじょうぶだってば、あたしいつもこっから出入りしてるじゃん。」
小声で笑いながら、あたしは窓から窓に飛び移った。
とたんに、甘いムスクの香りが遠のく。
真似して使ったインセンスは、確かに同じものなのに、あたしの部屋のムスクは、ちっとも甘くなくて、全然いい匂いじゃない。
「またな。」
20センチ離れた甘い天国から、彼があたしに囁いている。
あたしは、胸にうずまくたくさんの言葉を飲み込んで、なにもいわずに手をふった。
あたしと彼の目がふと合う。
見つめあってる間、彼は少しだけ、悲しげな顔をしてくれる。
あたしはそんなちっぽけな事実にすがりつく。まだ彼はあたしのこと、ちょっとは大切なんじゃないかって。
別れを惜しんでくれてるんじゃないかって。
そう思いこまなきゃ、耐えられないから。
あくびまじりの声で、彼が言う。あたしは、窓を静かにあけて軽くのびをした。
彼の部屋のこの窓から、あたしの部屋の窓まで、距離はだいたい20センチくらい。
「だーいじょうぶだってば、あたしいつもこっから出入りしてるじゃん。」
小声で笑いながら、あたしは窓から窓に飛び移った。
とたんに、甘いムスクの香りが遠のく。
真似して使ったインセンスは、確かに同じものなのに、あたしの部屋のムスクは、ちっとも甘くなくて、全然いい匂いじゃない。
「またな。」
20センチ離れた甘い天国から、彼があたしに囁いている。
あたしは、胸にうずまくたくさんの言葉を飲み込んで、なにもいわずに手をふった。
あたしと彼の目がふと合う。
見つめあってる間、彼は少しだけ、悲しげな顔をしてくれる。
あたしはそんなちっぽけな事実にすがりつく。まだ彼はあたしのこと、ちょっとは大切なんじゃないかって。
別れを惜しんでくれてるんじゃないかって。
そう思いこまなきゃ、耐えられないから。