チョコとトマト標識



ぷに、ぷに


と、頬に違和感。

片方の頬は下の柔らかくて人工的な感触に浸っているはずなのに、もう片方の頬には人の肌が優しく触れる。

…なんだ、これ。

目蓋を持ち上げようとするけれど、なかなか動こうとしてくれない。


「……なぁ、」


そのうち頬の感触だけじゃなくなって、頭の上から低くて心地よい声が静かに振ってくる。
内側からほんのりと熱く、頭が真っ白になって。

なんだろうこれ。すごい落ち着く。


感触だけでわかる、大きな手のひらが私の前髪を持ち上げて、




「いつになったら、来んの?」




ノイズのない声が、脳内で静かに消えていった。

< 1 / 33 >

この作品をシェア

pagetop