チョコとトマト標識
ちなみにこの『唇の青くない藤木くん』は、安重と同じく中学の頃同じで。
クラスは1年生の時だけ一緒だったけど、それでも廊下ですれ違うたび話し込んでいた気がする。
でも高校に入ってから階が違くなって、大きなイベントかなんかでしか顔を見ない程度になっていた。
それに実は中学の頃私のほうが勉強できてたし。
なのにさっき「生徒会に入った」とか言われて若干落ち込んだ。
「いいなあ…背、大きくなったね、藤木くん」
しばらくの沈黙のあとだったからか、声をかけると藤木くんはびくり、と肩をはねらせる。
それからロボットみたいにぎしぎしと顔をコチラに向けて、
「お、おう」
となぜだかぎこちなく、藤木くんはそう言った。
「あ!」
「こ、今度はなんだ…!!」
「手、出して」
「手?」
「ほら、早く。一瞬! 一瞬だけ…!!」
声はなんとなく違う感じだけど手でわかるかも。
なんて瞬間的にそう思った私は、ぎこちない藤木くんに念を押す。
意外と押しに弱かったらしい藤木くんは、戸惑いつつも右手を私の目の前に差し出した。