チョコとトマト標識
――――――…
「陽ー。陽ちゃーん」
目蓋の隙間からかすかに光りが入ってきて、それと同時に少し高めで大人っぽい声も耳に入り込む。
「………ん、」
「ご飯だって。 悪かったわね、うるさくして」
目蓋を三分の二開いてから、それがお姉ちゃんであることを確認すると、私はむっくりベットから起き上がった。
「ううん。大丈夫。お友達、帰ったの?」
「帰らせた。あいつらうるさいったらないわよ――」
染めた茶色い髪を耳にかけて、化粧をされて更に綺麗になった顔が、ダルそうに顔をゆがめた。
「私のことは気にしなくていいからね? にぎやかな方が私好きだしさ」
「…んー、そう? 陽もたまには連れてきなさいよ。アタシが手料理ごちそうする!」
にっこり笑って両手を広げたお姉ちゃんは、何でもできる私の憧れみたいな人だ。
明るくて、皆から好かれて、綺麗で。
少しぐらい似てても良いハズなのに、なんでお母さん達はもっと平等に産んでくれなかったのか小学生の頃はよくそう恨んだのを覚えている。
でも私と平等にしてしまったら今のお姉ちゃんは居ないわけで。
この人を、私のお姉ちゃんとして産んでくれたお母さんとお父さんには感謝している。
「さ、ホラ、ご飯だからさ」
『行こ』と明るく私の部屋から先に出て行ったお姉ちゃんの後を追って、私もパタパタと部屋から出た。