チョコとトマト標識
「そういえば、」
「んー?」
「私、恋というものがよくわからないんだけど」
「…むぐ、ゲホッ」
大きなテーブルに二人、お姉ちゃんと向き合って食事をする中、さっき考えていたことを話そうと勇気を出してそう言った。
言ったまではいいものの、丁度ご飯を口にしていたお姉ちゃんはむせたわけで。
一分ほど咳が止まらなかったらしいおねえちゃんに小さく謝ると、お姉ちゃんは手で『大丈夫』サインをして、
「よ、陽ちゃん…? こ、恋…ですか」
答えに戸惑うよう、眉をひそめた。
「…じゃあ、言いなおす…けど」
「うん」
「私、恋をしてしまったっぽい」
三秒ほど間をおいてから、お姉ちゃんは「ま、マジで…?」と困ったかのように顔をゆがめた。
「あ、えと、うん。わかんないけども…?」
「だ、誰に…!!」
「………」
「……陽ちゃーん」
「………顔、見たことなくて…」
「もしかして出会い系サイトいってるんじゃないでしょうね!?」
イスから立ち上がって、本気で心配そうな眼差しをおくるお姉ちゃん。
心配してくれるのはいいけど、私が出会い系サイトに行くと思っているんだろうか。
「き、昨日のことなんだけど………」