チョコとトマト標識

「お、俺だって悩む時は悩むんだからなッッ」

「あらそう。勝手にその小さくてシワ一つないピカピカで綺麗な脳みそで悩み事でもしていればいいわ」


そんな猿と犬みたいな喧嘩に、いつの間にかクラスの視線が集まり始める。
でもまあ、よくある光景だから、特に誰か止めようとしている傾向はなく。

結局、私が止めなければいけないことになるのだ。


「二人とも、そろそろやめないとムカデが廊下をはいつくばって君らの足から頭まで全ておおってしまうよ」


私はこの二人の対処法を知っている。

「げぇっ!! キメェっ!!」

「陽、あんた………やばい、気持ち悪くなってきたわ」

二人とも虫が嫌い。
特に嫌い。世界で一番嫌い。

なんせ中学の頃、教室掃除中にロッカー付近に出現したゴキ●リに追い回されて半泣きになっていたあの二人だ。


ようやく二人の喧嘩が収まった所で、『会議で遅くなった』と担任が教室に現れ、少し短縮されたHRが始まる。

その後、お昼まで二人の顔色は真っ青のままで、少々やりすぎたかな、なんて反省した。

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