チョコとトマト標識


「失礼しまぁーす」


生徒会って放課後すぐに集まって活動するものじゃなかったの?


と入った途端しーんとする生徒会室をぐるぐると見渡した。

生徒会っていうのは、なんだか格好よくて、皆真面目で…っていう憧れの印象を見事に打ち砕かれた瞬間である。

あ、それと鍵開いててよかったの…?

私の不法侵入の前に心配したのは生徒会の無防備さだった。



「あれ、米宮じゃん。何してんだ?」


とりあえず廊下が寒くて生徒会室のソファに腰掛けるなり、私の名を呼ぶものが現れる。
面倒臭いながらも顔を上げると、そこには爽やかな青年が。


「あ、うん、と。…ああ、そう唇の青くない藤木くん…!」

「懐かしいなーその呼び方! 今思うとすっげぇ脱力するわ」

「あはは、ごめん。…で、どうしたの?」


生徒会室の扉を半開きにしたまま入ってこない唇の青くない藤木君に声をかけると、「俺生徒会だもん」と何食わぬ顔で言われた。


「…うっそぉ…」

「嘘じゃないし」

「だって、私より頭良くなかったじゃん…」

「勉強したんだよ…!」


誇らしげに言葉を吐いた藤木くんに拍手を送ると、やっと藤木くんは生徒会室に入室。
そして私が座る数十万しそう(予想)なソファに腰かけた。


「で、米宮は何してたの?」

「…探偵?」

「…は? 探偵? 今読んでんの?」

「……あ、もしかして藤木くん!?」

「話が全然わかりませんが!?」


ご、ごめん、と謝るなり藤木くんは何が『藤木くん』なのか面白半分に聞いてくる。

でもなあ、多分藤木くんじゃないよなあ…。



とりあえず話すと長くなりそうなので適当に笑って、

「なんでもないよ」
と言っておいた。

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