大好きな君へ
「愛してる」




『愛してるよ』




目の前の相手から発せられたはずの声に、記憶の中の彼女の声が重なった。

頭が認識するよりも早く。
間違いが修正される。



あの日、あの時、携帯を通じて聞いた彼女の最期の言葉。

忘れたくても忘れられない。

決して忘れることのできない。

最初で最期の愛の言葉。



幻聴などという淡い幻想は簡単に崩れ去る。

彼女の声は本物で。

愛の言葉を紡いだ彼女はもういない。


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