大好きな君へ
「俊哉!!」
最近ようやく耳ん馴染んできていた声が大音量で俺を呼ぶ。
聞こえたはずの声を無視して食堂へと向かう廊下を歩き続ければ、甲高い女の声が再度廊下に響き渡った。
なんて煩わしい。
すでに無関係になった赤の他人の声に応える必要などないというのに。
いくら呼んでも無視されることに痺れを切らしたのか、女はついに行動に移したのだろう。
乱れた足音が追いかけて来た。
変わらぬ速度で歩いていれば、当然のことながら強引に腕を取られた。
己の意志とは無関係に歩みを止められる。
何の権利があって彼女は俺の行動を制限しているのだろうか。
その行為がどんなに俺をイラつかせるのか。
当の本人に想像できるはずもない。