好きだと言えるまで・・・
「ただいま。」
返事はこない。くる訳ない。
家には私一人だけ。母親も父親も遅くまで仕事だから。
いるのはお手伝いの人だけ。毎日変わるから慣れることもなく、会話も最小限。
だったらお手伝いなんかいらない。
でも、あの人たちがきてくれる。
「やっほー」
「こんにちはー!」
そう言って入ってきたのは、勇太郎と幸太郎。
双子のお兄ちゃん。
「あれ?何。今日は誰も来てないの?」
私には成人した実の兄が二人。
異様なくらい仲良しな兄弟だと評判らしい。
「「「こんばんはー」」」
そして、多くの近所の幼馴染たちがいる。
そいつらと一緒に非行に走ってしまった私。
お酒、タバコ、ピアス・・・
どこかに寂しさを感じるときがある。
いつもそれに気づいてくれるのは、幼馴染の龍斗と燐だった。
「どうしたの?」
「元気ねぇじゃんか」
優しく笑顔で見てくれる龍斗と燐。
ぎゅって手をにぎってくれる二人は、私の救い。
「今日ね。あいつに髪、直してもらったんだ♪」
笑顔で言えたつもりだった。
「ふーん?」
「また龍は適当に・・・。よかったね!」
「うん!」
やっぱ燐はやさしいな。
「で、何でうれしいのにそんな顔してんだよ」
「どんな顔?」
「・・・さびしいって顔に書いてあんだよ。」
・・・やっぱすぐばれちゃうな。
それから、二人はずっと。私の手を握って、ずっと話を聞いてくれた。
それは、やっぱりあいつの話。
二人は、どういう気持ちで聞いててくれたんだろう。
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