甘い君の唇にキス~恋の秘密は会議室で~
あたしから話し掛ければ、孝太も応えてくれるとは思う。
でも、いつもあたしばかりが孝太のご機嫌を取っているような気がして、素直になれない。
今日だけは、あたしから折れたくないと、そんな意地を張ってしまった。
孝太をチラリと横目で見ると、不機嫌そうに顔をしかめてソッポを向いている。
その様子があたしのイライラを余計に増幅させるのに。
もしかして、敢えてその態度なの?
「コーヒー淹れてくる」
乱暴に言い放って立ち上がると、孝太に手首を掴まれた。
ハッとして孝太を見下ろすと、あたしを見詰める孝太の茶色の瞳はいつもより濃い色をしていて。
その瞳の美しさに、口惜しいけど見惚れてしまう。
「カナ」
孝太の声は、怒気を含んでいるわけでも諭す様でもなくて。
ただ、甘く鼓膜に響く。
何も言えないでいると、そのまま引き寄せられた。