甘い君の唇にキス~恋の秘密は会議室で~
その場で固まっていると、勢いよくドアが開いた。
視線の先に見えたのは孝太と原口主任。
……なるほど。
うん。ある意味お似合いかも。 いや、納得している場合じゃなくて。
「なっ何も、何も聞いてないから」
「センパイ?」
孝太の背後から原口主任が誰にも言うなよと、あたしに無言のプレッシャーをかける。
分かってます。
誰にも言いませんよ、二人のことは。
原口主任は音もなく近付いたかと思うと、あたしの横をすり抜けて出ていった。
取り残されたあたしと孝太。気のせいなのか、孝太の顔が高揚している様にも見えて。
何故だか妙に動揺してしまう。 落ち着け、あたし。
「センパイ、片付けですか?」
「あ、そっ、片付け」
「俺、やりますよ」
孝太の指があたしが持っている雑巾に触れると、あたしは無意識にそれを握り締めた。
「いやっ」
「はっ?」
「いや、何でもない」
うん、何でもない。
孝太はキョトンとした顔であたしを見ていた。