甘い君の唇にキス~恋の秘密は会議室で~
   

浩二がゆっくりと近付いて、あたしを見詰める。

「話もさせてもらえない?」

「……浩二」

「本当に付き合っているんだ?」

そう言って、浩二の視線がチラリと孝太に動いた。


「……それは」

何を言えばいいのだろう。

あたしと孝太の関係なんて嘘っぱち。孝太はあたしの為に彼氏のフリをしてくれているけど。


押し黙るあたしを見詰めながら浩二は待っている。

あたしの言葉を。


重苦しい雰囲気の中、口を開いたのは孝太だった。

「もう、カナに近付くのは止めて下さい。いくら元カレでも、これ以上は俺が赦しませんよ」

孝太の怒気を含んだ言い方に、浩二の眉がピクリと動いた。


ギュッと孝太のシャツを握ると「大丈夫」とでも言うように孝太があたしに視線を向ける。


「元カレ、か……」

その様子を見ていた浩二が自虐的な笑みを零した。


「そう、だよな。鍵も使えなかったし」

「ごめん、なさい」


もう終わってしまった恋だと、わかって欲しかった。

あの頃の幸せな時間は戻らない。


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