甘い君の唇にキス~恋の秘密は会議室で~
一通り言いたい事を言って気が済んだ島田に何とかアポイントを取り付けて電話を切った。
事業部に文句の一つも言いたいところだけど、その前に見積書の修正が先だ。
……二時間かな。
出向いてからの島田の嫌味に付き合う時間。
たまに思う。
仕事の取り組み方は人それぞれでも、何かしら学ぶ点はあったりするものなのに。
この島田からは何も感じ取れるものがないようで。
それがまた苦手意識に繋がってしまうのか。
「野上、どうかしたのか?」
浮かない顔をしていたあたしに声を掛けてきたのは原口主任だった。
「見積書の修正があるんですが、先方が納得してくれなくて……」
「アポは取ったのか?」
「はい、一応今日行こうかと」
「何時からだ?」
「えっ?」
思いがけない問い掛けに、原口主任を仰ぎ見た。
切れ長の瞳と短髪の黒髪が冷たい印象を与える。その原口主任に話を聞かれていたのだ。
原口主任からも、注意を受けるのかと思うと、尚更気分は沈む。