奈那子が死んだ


 ひゅるり、ひゅるりと俺と下野の間に冷たい風が吹く。

 下野の顔は笑顔だが、その背後にはとっても暗くて冷たいものが見える。



 「ど、鈍感って…」

 「いや、俺も下野の意見に賛成だね。まったくもって救いようがない」


 藤沢はぱちんと手を合わせて、ごちそうさまといった。

 下野もごくりとお茶を飲み、ガムをかみ始めた。


 「弥英ちゃん、かわいそうだな~」

 「桐島くん、ちょっといいかな」


 藤沢と下野に呆れられているところに、話しかけられた。

 ふと横を見ると同僚である松崎さんがいた。


 「この書類、部長から渡してって頼まれたの」

 「あ、ほんとに?ありがとね」


 俺が書類を受け取ると、松崎さんはううんと首を振った。



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