小鳥と恋愛小説家
「あの、ありがと。おかげで…寒くない……。」
なんとかそれだけ言いきった。
そしたら彼女は、ホッとした顔になって……
「よかった……。万里子先生用事でいなくなっちゃって。そしたら隣から唸り声聞こえてきてびっくりしたんだ。」
「…………。」
そーか、万里子女史は留守ですか……。
つまりは、唸る俺の看病をしてくれたのは、君……ですか……?
手にしていたうさぎ模様のハンカチに目を落とす。
「あ!……熱あったから………。これしか冷やすのなくて……っ。」
赤い顔で慌てたようにそう言って
俺は、思わず、
「………!?」
そんな彼女の手を取って…
「…………ほんとに…ありがとう。」
「………!」
その小さな手のひらによく似合う…うさぎ模様のハンカチを乗せた。
「ど……どう、いたしまして………。」
彼女はそれをきゅっと握りしめると、赤い顔を隠すように俯いたまま…そうつぶやいた。