小鳥と恋愛小説家
「俺もツバサと一緒で欲しいものは絶対手に入れたいんだよねぇ。
カナは従兄弟で大好きだけど、小鳥ちゃんのことすっごく気に入っちゃったしー…。
まぁ、そんなわけで遠慮はしないからね?」
「……………。」
すらすらと喋っていく綾瀬くんを呆然と見ながらあたしは石になったみたいに固まった。
だって……この人何言ってんだろ………?
あたしを……気に入った?
好きなのは……小鳥ちゃん??
カナくんじゃなくて??
小鳥ちゃんて………あたしじゃなかったっけな?
結構珍しい名前だと思うんすよ………小鳥ちゃんて。
「…………聞いてるー?」
「…………ふぇっ!?」
顔を覗き込まれて思わずのけ反るあたし………。
だけど綾瀬くんは気を悪くするどころか楽しそうに笑った。
「い~いリアクションだねぇ?
じゃあ通じたわけだ。
可愛いねー小鳥ちゃん♪」
「…………か…可愛っ!?」
「…………いちいち面白いね、君。
そういうとこが飽きなくていんだけどー。
あぁ、台風ずいぶんとおさまったよ?
せっかく二人きりだけど………無理矢理ってのもまだ気が引けるし、今日は俺の気持ちを理解してもらうまでにしとくよ?」
「……………あ…あの………?」
綾瀬くんはあたしの言葉を待たずに薄暗い教室から一人スタスタと出ていった…………。
「……………今の…………なんすか………」
あたしは一人なんとかそれだけつぶやいた。