小鳥と恋愛小説家
「…………軽い発作でよかった。
顔色も少し良くなったし、病院に行く必要はなさそうだね。」
保健室で白いベッドに眠るツバサさんを診ながら、保健医の東雲先生がほっとした顔をした。
「お騒がせしました。」
それに綾瀬くんが丁寧に頭を下げる。
「興奮するようなことでもあったのかねぇ………。
とにかく、気をつけなきゃダメだよ。」
先生は綾瀬くんに注意するようにそう言って、用事があるから少し外すから…と言うと保健室から出ていった。
「……………カケル…………?」
か細い声にすかさず綾瀬くんがベッドに近づいた。
「ツバサ……、気がついた?
俺の見てないとこで倒れないでよ。
ツバサが倒れて母さんに叱られるのは俺だよ?」
綾瀬くんは冗談ぽくそう言って、ツバサさんに笑いかけた。
「悪かったわ…………。…………あの子、いる………?」
ツバサさんは気まずそうに綾瀬くんから視線をそらすと、ベッドに横たわったまま視線を動かした。
「…………先に、戻ってもらった。小鳥ちゃんがツバサを抱きとめてくれたんだよ?」
そう言うと、綾瀬くんはあたしにチラリと視線を向けて顔の前に手を出して『ごめん』のポーズをとった。
「…………!」
あたしはそれにハッとしてそっと保健室から出た。
きっとあたしがいたらツバサさんも気をつかうだろうし………。
扉の前で綾瀬くんが出てくるのを待つことにした。
「………あんた、余計なことまで言うんじゃないわよ………?」
「……………何が?
………ねぇ…ツバサ?
これはチャンスだよ………?
ツバサがカナを手に入れる為の………。
――――何が何でも手に入れたいんなら、プライドなんて棄てるべきだね。」
「…………っ!
………………止めて…………。」
「……………はいはい。
でも、ツバサの気持ちは双子の俺が一番わかってるからね………?」
「………………カケル…………。」