小鳥と恋愛小説家
外は相変わらずどんよりと曇り空だったけど、雨はまだ降っていなかった。
けれど、じめじめと湿っぽい空気がまとわりつく。
「…………。」
「…………。」
綾瀬くんと並んでベンチに座った。沈黙が続いてもあたしには話しかける勇気がなくて………
ただひたすら、綾瀬くんが口を開いてくれるのを待った………。
そして、
「ツバサと約束したからぜんぶは言わないけど………
見ての通りツバサは重い心臓病なんだ。
そんなツバサにとって…………カナはたったひとつの希望なんだよ。
この意味わかる……?
言えないから察してほしいな…………。
――――ツバサの命を繋げるためにね。」
「………………!!!!」
まっすぐにあたしを見つめる綾瀬くんが怖かった……………。
『―――別れてよ!!
カナヤがいなきゃ生きられないのに……………!!!』
ツバサさんのあの悲痛な声が頭を過る。
胸が―――――
痛くて
痛くて
――――ひどいよ。
察したくなんて、ないよ……………。
でも――――
知らずにいたいと思ったあたしは
なんてひどいやつなんだろうと、思った。