小鳥と恋愛小説家
「…………あ~あ…大河ってほんと暑苦しい。
俺そういうのマジパス。」
心底めんどくさそうな声を出したカケルは、大河の手を迷惑そうに振りほどくとシワになった制服を整えた。
「なんでカナがツバサと付き合うことを小鳥ちゃんが望むんだよ!?
おまえ………小鳥ちゃんに何吹き込んだ………!!?」
意味深なカケルのセリフに大河は怒りを露にして食ってかかった。
俺は呆然とそれを見ていた。
カケルの言葉が頭の中をぐるぐる回る。
『………小鳥ちゃんはね、カナに自分よりツバサといて欲しくて身を退いたんだよ。』
身を………退いた…って…………。
なんで……………。
「それを大河に言う義理ないから~。
カナは知りたいでしょ?
教えてあげるよ。……………後で、ゆっくりとね。」
「…………!」
カケルはニィと笑うと、それだけ言って自分の席に戻って行った。
大河も腹立たしげな様子全開で派手な音を立てて席に着いた。
教室にはざわざわと妙な雰囲気が残っていたけど、次第にひそひそと囁かれる声もなくなっていった。
俺は、昨日から混乱しすぎてぐちゃぐちゃの頭の中をどうにか整理しようと……じっと前だけを見据えていた。