先生が生徒を監禁して
「誰も一緒に入ろうとは言いませんよ。扉ごしであなたの入浴が終わるのを待つだけです」
にらみつけられた。
本当ですよ、といっておく。
病院内の湯船は換気扇があるだけで、外に通ずる窓がない密室だ。
仮にも換気扇から脱出を考えようとも、換気扇は高い位置にあり、とてもじゃないがつるつるのタイルは滑って、よじ登るのは不可能。
中に入れるものじゃない。
夏川の体型からしても少し無理があるだろう。
夏川は知るよしもないが。
「覗いたりなどしません。どうせあなたは、自ら俺にすがるのですから」
手の拘束を外し、代わりに手錠を。
片方は夏川、片方は俺の手首に装着し、足の拘束をほどいてさあどうぞと彼女が歩けるように手を取る。
床についた足はなんともおぼつかない。
寝たきりでいたのだから無理もないだろう。
いたわるように、俺は夏川の支えになった。