氷の姫君
「弱さなんかじゃない。優しさも一つの強さなんだよ。」

まっすぐな瞳で斎は私を見つめてくる。

「強さなんていらないわ。」

「どうして?」

「私はもう十分強いもの。」

「いいや。君は弱いよ。」

私はあたり一面を凍らせる。
そして斎の足元も凍らせて動かせないようにする。

「私のどこが弱いのかしら?」

「そうやって強がるところがだよ。」

斎は少し切なそうに微笑む。

「強がって無いわ!」

「でわ何故そうやって自分を守ろうとする?」

「え?」

「誰も守ってくれる人がいなかったんじゃないのか?」

斎はゆっくりと語りかけてくる。

当たり前じゃない。私は雪女のお姫様。
私が皆を守るの。だから自分しか自分を守ることができない。

そのことが私を強がらせてたの?

私はその場に座り込んだ。

同時にあたりの氷が消える。

ゆっくりと斎が歩み寄ってくる。

「俺じゃだめか?」

「え?」

斎が真剣な眼差しでこちらを見つめてくる。




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