氷の姫君
「ど・・・・うして・・・・?」

私は震える声を振り絞った。

「月華ちゃんが雪水晶で願ってくれたんだ。俺が君の記憶を持ったまま雪男に生まれ変わりますようにと。」

「うそ・・・」

月華が?

雪水晶は私が残したもの。

その雪水晶が月華の願いを受け入れたの?

「本当だよ。月華ちゃんの強い思いが願いをかなえてくれたんだよ。」

そういって微笑む。

嗚呼、笑い方もなにもかも同じ・・・・

「本当に斎なの・・・?」

「ああ。」

「本当に本当に?」

「そうだよ。」

思わず私は駆け出す。
そして斎の胸に飛び込む。

「ただいま。」

「っおかえりなさい・・・。」

涙が溢れて止まらない。
だけど前とは違う喜びの涙。

「永い間またせてごめんね。」

「本当に・・・待ちくたびれたわよ!」

「待っていてくれてありがとう。」

私の涙を拭いながら嬉しそうに微笑む斎。

「帰ってきてくれてありがとう。」

私も涙を流しながら微笑む。

そして静かに口づけを交わした。

きっとまた私たちの新しい物語が始まるのね。

そう目を閉じながら感じた。
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