氷の姫君
「っ!出られない!!!」

円陣の中でシェリルが叫ぶ。

「シェリル。今の貴方じゃ私に勝てないわ。」

「何故!?私はお前なんかに負けない!!」

シェリルは叫びながら氷の柱を壊そうとする。

私はシェリルの前に降り立つ。
暫く抵抗していたシェリルが抵抗をやめその場にしゃがみこむ。

そして泣き出す。

「私は・・・私はダルジェ様の婚約者なのよ?あの美しくて完璧なお方の傍にいようと努力したわ。なのに何故?何故私じゃ駄目なのよ!!!」

わあっと泣き出すシェリル。
私は円陣を開放する。

そして歩み寄る。

そしてそっと告げる。

「シェリル。あなたは確かにダルジェに恋をているわ。だけどその恋は紛い物よ。ダルジェは確かに完璧に見えるけど案外脆い人よ?あなたはダルジェの外側しか見ていないわ。生き物はね、みんな完璧ではないのよ。完璧を目指し努力して生きているから美しいのよ。」

そう告げるとシェリルは黙り込む。


「それにね・・・・」

私は息を吸い込み告げる。

「確かにダルジェはかっこいいわ。でもね。もしダルジェが今の容姿のように美しくもかっこよくなくても私はきっとダルジェに恋をしたと思うわ。」

「・・・・何故?」

シェリルは不思議そうに尋ねる。

「だって私ダルジェ自身が好きだから。“ダルジェ”本人じゃなきゃ嫌なのよ。」

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