氷の姫君
「なあ月華?」

「なあに?」

「なぜ私が空を飛べるのかときいただろ?」

「うん。」

「私たちヴァンパイアは空を飛べるんだ。」

「そうなの!?」

「ああ。ただ私は飛ばないだけだ。」

「どうして?」

「昔ある者と飛ばないと約束したからな。」

そう言うとあの最初に見た遠い目をしていた。
それはダルジェの好きなひとと?

「そっか。でもどうして私を追ってきてくれたの?」

「無意識、だな。その時は約束自体忘れていたからな。」

そう言って微笑むダルジェ。
ダルジェ舞踏会のときはあまり笑わなかったけど、2人の時は笑ってくれる。
なんだか嬉しいな。

「追ってきてくれてありがとう。」

「ああ。」

小声で呟いたけどダルジェはきちんと聞きとってくれた。

“コンコン”

部屋をノックする音が聞こえた。
< 61 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop