氷の姫君
振り向くと後ろにファードが居た。
彼は不思議そうに私を見ていた。

「何をしているんですか?」

「あ、あの迷子に・・・。」

おずおずと答える。
すると彼は呆れたような表情を浮かべた。

「雪女って言うのは貴方みたいに少し抜けている方が
多いのですが?」

ん?遠まわしに馬鹿にされた?
私はむっとして言い返した。

「抜けているんじゃありません!ただこのお屋敷が
広いんです!!」

「そうですか。これくらい普通の広さですがね。」

さらっと言い返された。
私の国ではこれくらい普通じゃないもん。

悔しくてうつむくとまた呆れた声が聴こえてきた。

「おや。さっきの威勢のよさは何処に?これくらいで落ち込んだんですか。」

「落ち込んでなんかないわよ!」

「そうですか。では、私は忙しいのでこれで。」

そう言って足早にさろうとするファード。

「ま、待って!」

彼は怪訝そうな瞳で振り返った。

つい呼び止めちゃったよお。
もうこうなれば!

「あの、私ダルジェの所にいきたいんだけど・・・。」

「勝手に行ったらどうでしょうか?。」

皮肉めいた微笑を浮かべるファード。
だから迷子なんだってば!
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