眠れぬ夜は君のせい
「辞めて、当てがあるの?」

辞表を受け取った後、課長が聞く。

「…あります」

アタシは、答える。

「実家が農園をやっているんです。

辞めたら、家を継ごうと思うんです。

両親もいい年ですし、跡継ぎはアタシ1人ですし。

両親にも、早く帰ってこいって言われてて…」

ウソだ。

アタシには両親がいない。

物心がついた時には、アタシは施設にいて、両親はいなかった。

ずーっと、1人で生きてきた。

一晩中考えて、思いついたウソを話す。
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