眠れぬ夜は君のせい
「お前が道で倒れていたから、俺が運んだ。

ここは俺の部屋だ」

そう言った俺に、彼女は目を伏せた。

「俺は黒川正宗(クロカワマサムネ)、お前は?」

自分の名前を言った俺に、
「――わからない…」

小さな声で、彼女が言った。

「はっ?」

聞き返した俺に、
「わたし、自分の名前がわからないの…」

彼女が呟くように言った。

自分の名前がわからないって、どう言うことなんだ?

「わたし、どうして倒れていたの?」

彼女は両手で頭を抱え、パニックになりかけている。
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