眠れぬ夜は君のせい
「主人である俺が決めたことだ、お前たちに否定される筋合いはない」

そう言った俺に2人は顔を見あわせた。

「けど、このことが旦那様のお耳に知れたら…」

そう言ったメイド長に、
「父上には猫を1匹飼うことになったとでも言えばいい」

俺は言った。

猫――ああ、そうかと俺は納得した。

何かに似ていると思った彼女は、黒猫に似ていたんだ。

指通りのよさそうなあの黒い髪がまさにそうだ。

「それに、お前たちは名前すら覚えていない彼女を吸血鬼のエサにしろと言うのか?」

俺の言うことに、メイド長と谷田部は口を閉じた。
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