眠れぬ夜は君のせい

├狂わせて…

「抱きしめて…!」

とっさに言った言葉に、岳が目を見開いた。

荒っぽかった手つきが止まる。

「わたしはあなたを……岳を、あいつだなんて思ったことなんてないわ」

だって、あなたは違うから。

「確かに、あいつのことは好きだった。

優しかったし、わたしのわがままもいつも聞いてくれて。

でも、今思うと、よくわからないの。

本当に、あいつのことが好きだったのかなって。

優しいだけだったあいつを、本当に思ってたのかなって」

岳の背中に手を回す。

胸に顔を埋める。
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