眠れぬ夜は君のせい
あげはと谷田部が黙って、この状況を見つめている。

沈黙に先に根をあげたのは、
「――もういいです、失礼します」

章子の方からだった。

彼女は俺に背中を見せると、部屋を去った。

「本当に申し訳ありません」

謝罪の言葉を述べると、谷田部も章子の後を追った。

嵐が去った後みたいに部屋が静かになった。

「あげは、閉めろ」

「はい…」

返事をしたあげはがドアに寄ると、静かに閉めた。

音1つ立てることなく静かに閉めたドアから、あげはは離れなかった。
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