眠れぬ夜は君のせい
「――あげは?」

ドアは閉まったはずだろ?

俺に呼ばれたことに気づいたと言うように、あげはが俺のところへ戻ってきた。

「お菓子、用意しますか?」

そう聞いてきたあげはに、
「頼んだ」

俺が返事をすると、あげはは背中を見せると用意を進めた。

時おり、用意をしている彼女の手が止まる。

止まったと思ったら、すぐに動く。

「――あげは…」

気がついたら、俺は彼女の後ろ姿に歩み寄っていた。

彼女に触れたらダメだ…と、頭の中で何かが言っている。

だけど、それに逆らうように俺の腕はあげはに向かって伸びていた。
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