眠れぬ夜は君のせい

├いっそのこと、このまま

帰りが遅くなってしまった俺を迎えたのは、
「おかえりなさいませ、ご主人様」

あげはだった。

「ああ」

俺は返事をすると、あげはの横を通り過ぎた。

チラリと、横目であげはに視線を向けた。

彼女の目は、やっぱり黒だった。


――赤い目をしていたんですって、その吸血鬼

章子の口から聞いた吸血鬼の特徴――何故だかわからないけど、それが俺の中でずっとひっかかりっぱなしだった。

あげはの目は黒だ。

吸血鬼の特徴から離れているのに。
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